疲れているおじさん

乗ったバスは学校帰りの小学生でいっぱいでした。乗ってすぐ吊革につかまりぼんやりしたら、「どうぞ」。男児が私に席を譲ってくれるというのです。「いいよ、座ってな」「いえ、どうぞ」。厚い眼鏡レンズに歯列矯正の彼の厚意を無にするのはやはりよくないと思い至り、席を譲ってもらいました。

子どもがざわめく車内でよりによっての優先席に揺られながら、一瞬むっとしたり反射的に断ったりした自分を思い返して敗北感のようないらだちを感じていました。席を譲られた高齢者がかたくなにそれを拒んで見苦しかったという話を見聞きしては、素直に楽をさせてもらえばいいのにと思っていましたが、いざ自分がそうされると心にさざ波が立つことを実感しました。

こうして日々確実に齢を重ねている事を思い知った30歳代最後の秋です。